政府の規制改革会議は28日、雇用分野の重点検討項目をまとめた。職務や地域を限定した正社員の雇用ルール整備、非正規労働者を正社員に転換する仕組みづくり、解雇の金銭解決の導入――の3つを正社員改革の柱と位置付ける。官民の職業紹介事業や職業訓練の強化策も検討し、成長産業への人材移動を後押しする。正規・非正規の二極化が進む労働市場の改革につなげる。

雇用分野の作業部会の座長を務める鶴光太郎・慶応大教授が同日の会合に示した。デフレ脱却には、賃金抑制と非正規拡大に偏っている日本企業の雇用調整方法の見直しが必要と指摘。非正規労働者の増加で劣化した日本の人的資本を向上させる観点からも、雇用改革を進める。

重点課題のうち、「準正社員」とも言える限定正社員の導入は厚労省も推進する方針だ。これまで正社員は研究職から営業職といった幅広い職種への転換や転勤があり、フルタイム勤務が大前提だった。これに対し、限定正社員は配属先の事業所や仕事内容、労働時間の範囲を雇用契約で細かく決める。

正社員に比べ給与水準は低いが、社会保険に加入できるので、パートや派遣社員より生活が安定する。女性の正社員が子育て期間だけ限定正社員として働く選択肢や、シニア社員の活用方法も広がる。賃金が安く正社員転換へのハードルが低いため、非正規労働者の処遇改善につながる可能性もある。

さらに数年の有期契約で能力が認められれば正社員に転換する「テニュア制度」の導入も提言した。

今後の焦点は、政府内に消極的な意見が多い解雇の金銭解決だ。規制改革会議が求める「解雇補償金制度」は、裁判で解雇無効の判決が出た場合に、労働者が職場復帰だけでなく、金銭補償を受けることで退職する選択肢を用意する仕組み。欧州では一般的で、法律で金額の目安や上限を定めている。

現在日本では、解雇無効の場合には原職復帰しか認められていない。実際には判決に至る段階で和解手続きにより金銭解決している事例が多い。退職金を通常より増やして、早期退職を促すことも多い。

大企業は解雇にかかるコストが明確になり、経営がしやすくなるため賛成する一方で、中小企業は解雇時の負担が大きくなるとみて反対する可能性が高い。2003年に厚労省内の審議会で議論した時には、補償金額について大企業と中小企業が折り合えず、導入が見送られた。

(日経新聞)